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2008/3/19
報告者 / 大西 建児 (NPO ASTER理事)
2008年3月19日 スイス チューリッヒで開催された「SWISS Testing Day」 という1日限りのイベントに参加してきました。そこで本レポートでは、このイベントの概要や雰囲気をお届けします。
今回、チューリッヒへ赴いた主目的は3月18日に開催されたISTQB(International Software Testing Qualifications
Board)全体会議出席のためでした。
簡単にISTQBの全体会議で話合われていることをご紹介しましょう。
まず議長(アメリカのテストコンサルとして著名なレックス・ブラック氏)による全体状況の報告に始まり、会計報告とその承認、各ワーキングパーティ(作業グループで資格レベルに応じたグループ、全体プロセスをまとめるグループ、ガバナンスを検討するグループなど複数あります)の作業状況報告や新年度の各パーティのリーダ決め、各種ルールの改編やら制定への投票、アドバンスやエキスパートレベル資格における検討内容の報告やディスカッションなどなど、実に多岐に渡ります。
朝9時に始まり、夜19時近くまで、途中昼食や休憩は挟みますが、ほぼ、ぶっ通しで行われました。
およそ30の国や地域から代表者が出席しているため、各々の主張が真正面からぶつかることもあります。
取りまとめの議長や会議の主催国(今回はスイス)のご苦労には頭が下がります。
尚、今回は新規加盟国として、アイルランドとアラブ首長国連邦が認められました。
次回の全体会議の開催国はブルガリア、その次はインドと全体会議の場所からも、
ISTQBの広がりを感じることができます。
スイスと言えば何を思い浮かべるでしょうか?
マッターホルンやユングフラウを代表するアルプスの風景。そしてアルプスといえば少女ハイジ。
食べ物といえばチーズフォンデュ(写真2参照)といった観光面をイメージする方がいれば、時計をはじめとする精密機械やチューリッヒという名を冠した保険会社やら、「今回の報酬はスイス銀行の秘密口座に入金してくれ」といった感じでスパイ/アクション映画などによく出ることから、金融・保険といった産業をイメージする方もいるでしょう。
大国に挟まれた中立国であるスイスは、民族も多様で主たる公用語はドイツ語、フランス語、イタリア語です。私が会話した限りですが、子供から大人まで英語が通じたことには驚きました。多分、個人旅行でも簡単な英会話ができれば、スイスではこと困らないでしょう。
治安はとても良く、日本の大都市より、よほど安全だとチューリッヒでは感じました。
さて、そんなスイス チューリッヒですが Testing Day (以下本イベントと記します)が開かれたのはチューリッヒ湖畔にある、コングレスハウス(写真3参照)でした。
チューリッヒ中央駅(写真1参照)からは路面電車に10分ほど乗り、降車後徒歩5分もかからない便利な所にあります。
会議場と言う割には、特に大きな看板が出ている訳ではないため少し場所は分かりにくいのですが、ヨーロッパらしさと現代が融和している概観の建物です。
会場受付では、アルファベット順に個人名入りのネームプレートが付いたネック・ストラップを渡され、朝から終日オープンされていた展示会場に足を踏み入れました。
展示会場入り口にはカウンターがあり、飲み物が終日無料で配られており、朝はパンも用意されていたので、参加者はそれを飲み食いしながら、展示ブースを見て回るといった趣向です。
写真(写真4参照)のように朝から結構賑わっており、ブース数も20位はあったと思います。
展示に用いられている言語は半分が英語、半分はドイツ語でした。
ツールベンダ(日本でも良く聞く企業を含め)あり、テストコンサルあり、変わりどころでは一番下の写真のようにグーグルも出展していました。
特に印象に残ったのはISTQBの普及度です。
5社ほどの展示ブースで、Foundation Levelや、Advanced Level(日本ではALは未実施)の教育サービスを紹介していました。
ヨーロッパではISTQBが十分認知されているということについては、ISTQBの委員との会話でも充分伝わってきました。
本イベントは登録者数600人と、スイスでのテストに関する状況が十分伝わってくる数の方が参加しました。
基調講演会場には、私が数えたところ400人以上の方々がぎっしりと集まっていました。
基調講演は冒頭に紹介したISTQBの代表でもあるアメリカのテストコンサルタント レックス・ブラック氏が 「Ten Worst Things I Ever Did or Saw that Screwed Up Testing」 というテーマで50分間英語での講演でした。
※レックス・ブラック氏はJaSST’2005 in Tokyoの基調講演者でもあり、当時日本にISTQBの取り組みを真剣かつ詳しく紹介してくれた方でもあります。彼の来日がなければ日本でのISTQBでの取り組みは今のようなものでは決して無かったことでしょう。
会議の冒頭でブラック氏が、「ISTQBのFoundation Levelを取得している人、手を挙げて!」と呼びかけたところ、少なくとも3分の1以上の参加者が手を挙げたのですが、そこからもこの資格の浸透度が感じられました。
講演内容は、氏が現役のテストマネージャ時代に失敗した10の出来事を通して、主にテストの管理面でどういった事に気をつけ、かつ取り組むべきかといったものでした。
例えば、「ツールを愛しすぎてしまったケース」や「悪いバグレポートを書いてしまったケース」管理面では「辞めさせるべき人を辞めさせられなかったケース」といったシュールなものもありました。
終始ユーモアと身振り手振りを交えた氏の話は、会場から多くの笑いを誘い、受けも良く氏も気持ち良く講演を終えられました。
この写真(写真6参照)は講演直後の機嫌の良いところを写したものです。
基調講演の後は、4トラックに分かれてセッションが設けられていました。
英語とドイツ語のセッションから選べるのですが、私はドイツ語がNGなため英語セッションを選びました。
セッション構成としては、招待講演かスポンサー企業によるセッションの2種類を交互の時間帯で実施するというものです。
招待講演セッションでは、テスト管理の経験&実践論や、チューリッヒの航空管制システムの移行テストの事例、テスト自動化やオープンソースを使った性能テストの事例などバラエティーに富んだ内容でした。
スポンサーセッションは、テスト自動化ツールの適用もしくはテスト管理系のコンサルに関するお話に分かれましたが、半数以上がテスト自動化の話題でした。
セッション内容もそうですが、私の印象に残ったのは、参加者が「つまらない」または、自分にとって興味が無い話題だと思った瞬間に、講演途中でも自由に席を立つことです。
#基調講演では、こういったことはありませんでした。これはブラック氏の基調講演の内容が良かったからでしょう。
私が席を立ったかどうかといえば...
某国特有のなまりがひどい英語の発表で、独特の発音のせいでマイクがずっとハウリングを起こしたため、聞くに堪えなくなり(本当に頭痛がしました)席を立ったセッションが一つありました。
主催者側にもそのことを説明(クレーム?)したのですが、「仕方ないんですよ~。この問題が起きるのは発音のせいだから、調整しようがないですし~。」とのお答え。
確かに同じ会場でドイツ語なまりの英語ではマイクに問題は置きませんでしたから。
ちなみに昼食は朝食同様、会場が立食形式で用意しており、プログラム終了後には同様のスタイルでアペリティフまで用意するという、参加者にとってはまさに至れりつくせりのサービスが展開されていました。(写真7参照)
上記でご紹介したグーグルブース(写真8参照)では、Model Based Testの取り組みについて紹介していました。
本レポートはここまでです。少しでも外国のイベントの雰囲気が伝わったならば幸いです。