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イベント報告
 ソフトウェアテストシンポジウム 2024 東北

2024年5月31日(金) 仙台市戦災復興記念館

ソフトウェアテストシンポジウム 2024 東北

はじめに

当イベントはオンサイト開催で、仙台市戦災復興記念館で行われた。開始時間前は、参加者同士でコミュニケーションを取っているところも見られ、賑やかであった。そして、実行委員長の武田氏によるオープニングが始まった。今回のタイトルが「あらためて基本のキ〜今だからこそ勉強したいテストの基礎〜」という事や、現地開催のみである事から、ワークをやりたいと話した。また今回の参加者は例年よりも地元宮城からの参加が多く、テストの経験年数もばらけたと参加者内訳にも触れた。その後、テストの問診表というプリントを用いて自分のテストにまつわる悩み、小ネタを書き出し、午後からのワークショップを共にする参加者と、自己紹介を兼ねて話し合う時間があった。

基調講演
「説明できるテストをつくるためにできることを考える」
 井芹 久美子 氏(ASTER)

JSTQB技術委員の井芹 久美子氏から発表があった。概要は以下の通りである。

セッション概要

はじめに、テストで仕様を分析する役割の方、テストケースを考える役割の方を想定したと話した。

・テストの説明の大事さ
思いつきだけでなく、テストを多角的かつ体系的に考える事が求められる。
・テスト技法を用いた説明をする
テスト技法は、体系的な方法が存在し、抜け漏れや重複を発見しやすく、共通言語としても使用できるため、カバレッジの説明がしやすいというメリットがある。
・テストの確認方法
ソフトウェア設計者に不安な点を聞き出す事が有効である。特に、変化点(3H:変化、はじめて、久しぶり)について質問する事で、潜在的な問題を発見しやすくなる。抽象と具体の間を意識的に行き来する事が重要である。

いずれにしても判断するのは人であり、常に様々な事を想定して準備しておく必要がある。自分たちでは検出や解決が難しくても一度は検討する事で、テスト対象の理解が十分か?といった課題を理解できる。

筆者感想

説明できるテストを考える事によってステークホルダー間での納得感の共感をし、コミュニケーションを取る一つの手段として活用していきたい。それだけでなく、テストを考える自分自身も本当に欲しかったものや足りないものに気付く事ができるという事で、様々なメリットがある事に気付いた。また、個人の感覚に頼りすぎる事なくテストを捉えるというのもテストだけでなく様々な事柄に流用していけると感じた。一方で、感覚も大切で、体系と感覚の良いバランスを取るべきという事も学んだ。

ワークショップ1
同値分割法と境界値分析
(JaSST'24 Tohoku実行委員会)

セッション概要

昼休憩を挟み、午後からは机を移動させ3~4人のグループになって取り組んだ。まず、欠陥や故障を考えるワークに取り組んだ。「同値分割法と境界値分析」について、手元の「お試しワーク問題」プリントの問題に取り組みながら、説明を受けた。

筆者感想

合計で3つの例題を用いたが、人によって何を基準に分けるかの個性がでる例題もあり、組織内でテスト設計をするときには認識のすり合わせが大切だと改めて気付いた。境界値分析では条件が増えるほどテストデータも増えるので、作成したテストケースにそれぞれ差がある事がグループ内の他のメンバーとの議論で明らかになり、この点も学びになった。

ワークショップ2
クラシフィケーションツリー技法
(JaSST'24 Tohoku実行委員会)

セッション概要

「ソフトウェアテスト技法練習帳」に記載のない「クラシフィケーションツリー技法」についての説明を聞いたのち、3〜4人のグループで練習問題に取り組んだ。1問目は大きな模造紙にクラシフィケーションとクラスの付箋を作成して貼り、全組み合わせを作成した。ここで他のグループのクラシフィケーションツリー図を見て、どのような捉え方をしたかの意見を交換した。2問目は更に条件を足し、最小のテスト数になる組み合わせを作成した。その後、他のグループとの意見交換を行った。

筆者感想

私のグループではクラシフィケーションツリー技法について知っている人はいなかったので、話し合いながらクラシフィケーションとクラスの分類をした。1問目はクラシフィケーションの抽象度が揃っておらず、組み合わせを書き出す段階で改善点に気付いた。2問目で分類方法が理解できるようになり、納得の行く図が書けた。話し合いながら手を動かす事で理解度が深まり、その後の他のグループがどのように考えたかを聞く事で実務に近い経験を積む事ができた。

筆者感想(全体)

今回は事前周知の通りオンサイトのみの開催で、ワークに力が入っており、頭と耳だけでなく口と手も動かして取り組めた。インプットだけでなくアウトプットも同時に行う事で、初めて聞いた技法もワークショップが終わる頃には理解できた。ワークショップで取り組んだ技法の選択や、問題文の難易度の適切さなど、実行委員の方々の念入りな準備により質の高い学びができたと感じた。実務で実際にテスト技法を手描きで書く事は稀なので、このような場で基本に立ち返り、取り組めたのは大きな経験になった。

記:東海林 虎輝

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