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2023年6月24日(金) 於 オンライン + オンサイト開催
ダイキン工業 テクノロジー・イノベーションセンター
2023年6月24日(土)オンサイト開催とオンライン開催のハイブリット形式でJaSST Kansaiが開催された。
プログラムは、基調講演、事例セッション、ワークショップ、テクノロジーセッションとテーマセッションが各2セッション行われた。
参加者の事前アンケートの結果の紹介があった。
アンケートの内容は、キャリアや参加地、参加目的などの項目があった。
アンケートの参加目的の上位が「自分自身の問題を解決したい」「組織の問題を解決したい」「チームメンバ間の問題を解決したい」であった。土曜の開催ということで、業務としての参加は少なく、自身のための参加が多いだろうと思っていたが、全体としては自身のためよりもチーム・組織のために参加というのが約半数を占めており、自分とのギャップを感じた。後述でも記載するが「思考停止」は他者に対して使うことが多いワードであり、自身で「思考停止」になっていることには気づきづらい。筆者はこれに気づく方法を知ることができたら面白そうという興味で参加した。
テーマ「思考停止」となった背景からはじまり、「思考停止」とは何か?「思考停止」にメリット、デメリットはあるのか?「思考停止」には、どのような原因があって、どのように解決していくと良いのか、事例を交えながら改善アプローチの紹介があった。
「思考停止」の一般的な意味を加味したうえで、講演内で扱う意味を解説した。
自分自身で物事について考え、判断することをやめてしまうことを意味する語。多くは批判的に用いられる語である。思考停止が起こる理由としては、何らかの要因により、権威や規範などに盲目的に従ってしまうことなどが挙げられる。
「詳細な状況の把握やその状況に基づいた判断なく、従来の方法や一般的な方法を継続的に行うこと」
たとえば、何も考えずに前例にしたがって技法適用すること、自ら学んだ技法をそれが正しいかはわからないが適用してみること、とは別としている。
思考停止のデメリット、メリットを解説した。
非効率、変化に弱い、成長がない
脳の疲労コストが低い、不要な判断をスキップ、多少スキルが追い付いていなくてもある程度効果が出る
思考停止の状況が訪れるということをSECIモデルの暗黙知と形式知をふまえつつ解説した。
部分的に意図的に思考停止することもあるが、全部ではないという説明もあった。
解決するための基本方針や判断の仕方、行動させる仕方とそれらに関する事例を紹介した。
紹介事例:
「思考停止」から行動に移すためのアプローチとして、次のことは非常に参考になると感じた。
最後に「『思考停止』という言葉を使っても、何も変わらない」という話があり、はっとさせられた。
そして、「思考停止」は抽象度の高い言葉で、「思考停止」にもいろいろということに気づかされた。
他者からは「思考停止」に見えても、その本人は考えたうえでの行動かもしれない場合もあるため、不用意に発して良い言葉ではないと考えさせられた。
組込み系ソフトウェアに対するカオスエンジニアリングの事例が紹介された。
カオスエンジニアリングとは、カオスエンジニアリングの品質活動における領域、原則の話からはじまり、事例の紹介で〆る内容だった。
また、カオスエンジニアリング導入の難度に触れられていた。
これまで「カオスエンジニアリング」というワードを耳にするものの、あまり学んでいなかったため、序盤の説明が理解を深めるのに助かった。また事例を聞く機会がなかったため、良い機会となった。
組込み系ソフトウェアで障害をあえて入れるのはかなり怖いところではある。カオスエンジニアリングにより、範囲想定ができる範囲で復旧テストする。テストできない領域からテストできる領域に押し上げると理解した。
「思考停止」になるシチュエーションをモンスター化し、そのモンスターを退治する必殺技を考えるというワークショップ。それぞれ、個人とグループのワークが行われた。
思考停止パターンを抽出する本ワークは、オンラインでもスムーズに情報共有できる工夫が凝らされていたため、オンラインでもストレスなく楽しめた。
ワーク自体も思考停止を考えるきっかけ作りとしては良いと感じた。
JaSST実行委員の企画セッションで、次の二つの講演があった。
組込みのセキュリティテストの解説は、基本的なセキュリティテストの紹介であった。
セキュリティテストの範囲、セキュリティのプロセスと技法の紹介があり、初学者としては学びやすい内容だった。
また、アバターを使ったユニークなセッションで音声アプリを使っての講演となっていた。
テスト設計コンテストの参加事例は、内容はやや高度なテスト設計チュートリアルという印象である。聴講者のコンテキストによっては少し難しいようにも感じたが、コンテストに複数回参加することでテスト設計に対する理解が増していったというのが感じ取れた。
スポンサーによるテクノロジーセッションが行われた。
ここ数年、スポンサーによるセッションの色が変わってきたと感じている。
以前は、製品紹介がメインだったが、社内事例を展開してくれている。テーマにとらわれないアラカルトな内容ではあるが、聴講者としては、刺さる事例も出てくるのでありがたいと感じる。
オンラインの参加者は確認が取れていないが、現地会場参加者が約30名。筆者も現地参加の予定であったが、諸事情によりオンライン参加となった。この辺はハイブリット化されたことにより大変助かったことではある。
基調講演、事例紹介はオンラインでも遜色はなく、ワークショップも、オンサイト、オンラインで滞らないような工夫がされていたが、登壇者の生の声を聴けるようにやはりオンサイトで受講したいといっそう感じた。
記:中岫 信(TEF道)