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2011年11月11日(金) 於 名古屋市中小企業振興会館 4F
基調講演は、藤江 壮氏による「- Flying into the future -」、YS-11に続く国産民間機としてのMitsubishi Regional (MRJ)開発における、市場動向、開発の狙いと他社との差別化や開発の取り組みについて詳しい解説であった。
民間航空機は、機体の座席数によりカテゴリー分けされ、現在一番大きなリージョナル機(地域間輸送用小型ジェット機)市場は、(今後は変化があるかもしれないが)大手二社の独占状況であり、MRJはここよりひとつ下の市場を狙った。それは99席未満の機体の新規需要をターゲットとした市場である。今後、北米市場はスコープ・クローズの緩和により、航空機の使用方法がハブ・スポーク型市場へ変化することで、99席未満の機体の市場が拡大し、5,000機との市場予測がたてられたことから今回のMRJによる開発ターゲットとして選択したとのことである。
MRJ開発の狙いは、新しい飛行機を作ることであり、次世代リージョナルジェット機のスタンダードを狙い、EU圏やアジア圏の主要都市間をカバー出来る航続性能や短時間で繰り返し運用する方法を考慮して開発を行なっているとのことであった。次に、今後の民間飛行機に必要な能力として3つのセールスポイント(乗客・環境・エアライン)が掲げられた。
特に印象的であったのは乗客への配慮である。乗客志向の快適な客室を、広く明るいキャビンで実現。環境・エアラインへは、燃費の良いエンジン開発、騒音低下や飛行機の運用・利用性の向上で実現している。飛行機は、最先端技術の塊と思っていたが、実際は、コンベンショナルな作りがなされている。理由は、飛行機は30年~40年の運用が前提としてあること、多くのパートナー企業との協力によって作られていることからである。また、現在運行されている飛行機から大きな変更は、エアラインでの運用が変化するため難しいことが多いことを理解した。継続的に利用される物は、開発を行っていく上で非常に大事な点であると認識した。
最後に、飛行機の設計で一番大事な点は安全であることをお話いただいた。現在の飛行機開発は、ソフトウェアの占める割合も増えている。しかしながら、ソフトウェアの開発は最後になると説明された。その理由は、飛行機は試験飛行で実際に動かし飛ばさないとわからないことが発生するからである。ソフトウェアを変更することで改善し作り上げられていくのである。物作りは、対象物の必要性・能力などを分析し、戦略を建てて狙いをはっきりさせることで、ぶれのない物を作り出すことが出来ることを再認識した。
ポスターセッションは、10件にも及ぶ沢山の展示があり、各展示に多くの方が集まり説明者と質問者がお互いに打ち解けて会話している姿が印象的だった。
このように、興味のあるパネルで直接説明が受けることは大変勉強になった。また、これが午後実施するSIG選択の窓口になるので興味ある展示へいって、事前にパネル説明者と直接会話をすることでSIGへの参加意欲が沸く良いセッションであったと思う。
特別講演は、森崎 修司先生による「製品、ソフトウェア、プロジェクトの前提と品質の関連付け」だった。はじめに、「ソフトウェアに求められるものは何でしょう?」との問いかけがあり、参加者のコンテキストに依存した回答・意見を考えが出ることが説明された。
例えば、Web開発とインフラシステムのようにコンテキストが違えば求められる結果・回答は当然のように違ってくる。これを防ぐには、互いにコンテキストの明確化をすること、理解することが大事であることをご講演いただいた。
経験発表は、都築 将夫氏が「探索的テストの適用事例」であった。ソフトウェアの差分開発を重ねるごとに規模の肥大化、構造の複雑化が進む。その中で、潜在バグ(母体に潜むバグ)が差分開発を重ねるごとに発生する状況の改善方法についての発表が行われた。通常のテストでは潜在バグを検出出来ない為に、テスト方法の再検討、対象製品の弱点分析した結果を用いた探索的テストで潜在バグを検出する方法を紹介した。探索的テストの弱点を理解し強みに変えて行うという点で、今後の発展を期待したいと思う発表であった。
2011年のJaSST'11 Tokyoに引き続きJaSST'11 Tokaiにおいても"テスト設計コンテスト"が開催され、2チームの発表があった。
「株式会社イーシーエス」チームは、テスト設計戦略は「全てを洗い出す設計方法」だった。
たとえば、顧客要求、ユーザー観点、テスト技法、生産性、テスト分析、顧客要求として、すべて洗い出すことによって多くなったテストケースを、デシジョンテーブルを使用して圧縮する方法を提案していた。さらにリソースの分業化にまで触れられており、品質・生産性の向上の実現まで踏み込んでいた。
「あまがさきてすとくらぶ」チームは、今回のテスト対象仕様書の要求仕様をテスト視点で見直し開発にもテストにも役立つ内容というコンセプトで、様々な技法を利用した要求分析を行い、仕様の見直しを行い、見直した仕様を元にテスト設計を行っていた。分析では多くの方法を実施していることが印象的であった。いろいろな方法を使うことにより、各方法の強みや弱みが理解できたので、実際のテスト設計場面では有効な方法を選択出来る可能性を感じる発表であった。
最後に、10テーマに及ぶSIGがあったが、1つしか参加できないのは残念だった。
参加したSIG「やろまいか!テスト設計コンテスト」では、ICE Breakから入り参加者全員で、テスト設計に対して様々な疑問や悩みを出し合い、参加者全員から提案や考え方が活発に出て有意義な議論をすることが出来、時間があっという間に過ぎてしまった。また、参加者のネットワーク形成も出来、非常に深く・楽しく・有意義であった。
今回のテーマである、「やろまいか!東海」の「やろまいか」は、「やりましょう」との意味。はじめから終わりまでやる気のある参加者・実行委員の意気込みを感じた。
ポスターセッションやSIGは、参加と発表者が近くなることで、有意義な内容となり、参加者も「やろまいか!」と思える内容であったと思う。
(記:杉田 正実)