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国際調査活動
 AWCTCCS 2013 参加レポート


報告者 / 辰巳 敬三 (NPO ASTER)

はじめに

写真/シンガポールのマーライオン
[写真1] シンガポールのマーライオン

2013年7月16日にシンガポールで開催された、アジアで初めての組み合わせテストワークショップ AWCTCCS 2013 (1st Asian Workshop on Combinatorial Testing for Complex Computer Systems) にASTERのメンバーとして参加し、発表しましたので状況を報告します。

AWCTCCS 2013の概要

写真/シンガポール国立大学
[写真2] シンガポール国立大学

AWCTCCS 2013はIEEEの国際会議の一つであるICECCS(International Conference on Engineering of Complex Computer Systems)の併設ワークショップとして開催されました。ICECCS自体は1995年に第1回が米国フロリダで開催され、今年で第18回目を迎えるという歴史ある国際会議です。2000年には東京で開催されています。今回組み合わせテストワークショップが併設されることになった経緯は分かりませんが、複雑な(Complex)コンピュータシステムにおけるテスト技法として有効という判断なのかもしれません。

開催場所はシンガポール国立大学で、ワークショップ会場は工学部エリアにあるTemasek Laboratoriesの会議室でした。

参加のきっかけ

写真/Temasek Laboratories©NUS
[写真3] Temasek Laboratories©NUS

ICST 2012で親交を得た米国NISTのRaghu Kacker氏から、シンガポールで組み合わせテストワークショップを開催することになったので東南アジアの発表者やコンタクト先を紹介して欲しいとの依頼を2012年12月に受けました。このため、ソフトウェアテスト技術振興協会(ASTER)のASTA(Asia Software Testing Alliance)活動のコンタクト先を紹介するとともに、日本で組み合わせテスト技法を開発、あるいは適用している方々に論文応募を呼びかけました。

なお、通常は国際会議やワークショップではフルペーパでの論文応募となりますが、このワークショップでは、出来るだけ多くの実務家に発表して欲しいという意向から、論文を書くのが困難な実務家に配慮して、少し長めのアブストラクト(extended abstracts, 250~350ワード)で応募し、発表スライドを準備すればよいことになっていました。

日本からの論文応募は最終的には東芝の市田憲明氏、そして私(辰巳)も応募することにしました(アジア開催のワークショップなので日本のプレゼンスを示さないと!)。

ワークショップの状況

プログラムと参加者

写真/東芝・市田氏の発表
[写真4] 東芝・市田氏の発表

ワークショップの発表件数は、5月始めの採択通知時に9件と聞いていたのですが、その後6件になったようです(日本-2、米国-1、中国-1、インド-1、マレーシア-1)。東南アジアでNISTの組み合わせテストツールACTSのダウンロード数が多いということが今回のワークショップ開催のきっかけだったそうですが、適用や研究はこれからと言ったところかもしれません。

参加者はワークショップ主査と発表者が7名、聴講者が1名、他にシンガポール国立大の関係者が6名の計14名でした。小規模なワークショップだったので、比較的気楽に発表することができました。

発表資料の準備

少し時間が戻りますが、アジア初の組み合わせテストワークショップということで、私の発表では、組み合わせテスト技法の歴史と日本での適用状況、ASTERの活動を紹介することにし、タイトルも(勝手に)日本代表のつもりになって、Combinatorial Testing in Japan - History, applications, techniques and tools - と大それたものにしました。

発表資料の作成にあたっては、ソフトウェアテスト・コミュニティを通じた知人である日本の主要ITベンダー所属の方々に、各社の組み合わせテスト技法の適用状況をアンケートさせていただきました。また、日本における組み合わせテストの2大ツールであるHAYST法とPictMasterの紹介を発表資料に入れるために、富士ゼロックスの秋山浩一氏、岩通ソフトシステムの鶴巻敏郎氏に資料や情報の提供をお願いし、多大なご協力をいただきました。ご協力いただいた皆様にこの場をお借りして感謝申し上げます。

発表、セションチェア

写真/筆者の発表
[写真5] 筆者の発表

実は公式の場での英語のプレゼンテーションは人生2回目です!(1回目は1987年に東京で開催されたCOMPSAC) 事前に四苦八苦して英語原稿を作成し何とか発表できるように練習しました。本番では原稿を見ながらの発表になってしまいましたが、何とか通じたのではないかと思います。

また、ワークショップの1週間ほど前にKacker氏からセションチェアをやってくれないかとの依頼があり、これもよい経験と考えて引き受けました。セション(3名の発表)の司会と質疑の進行役を何とかこなすことができました。

私の発表資料は以下に掲載していますのでご覧いただければ幸いです。

【資料スライド】Combinatorial Testing in Japan (slides)
(http://www.slideshare.net/Bugler/combinatorial-testing-injapan20130616)
【資料PDF】Combinatorial Testing in Japan (extended abstract)
(http://a-lifelong-tester.cocolog-nifty.com/publications/Combinatorial_testing_in_Japan_abstract.pdf)

ディスカッション、まとめ

写真/AWCTワークショップ参加者
[写真6] AWCTワークショップ参加者

ワークショップの最後に組み合わせテスト技法の適用推進に関するディスカッションを行いました。私からは、私が今回の発表で各社にアンケートして適用状況を整理したように、各国のキーマンに適用状況や課題を整理してもらって次のワークショップで発表、議論すればどうかと提案しました。そして最後に集合写真を撮って解散となりました。

おわりに

今回のワークショップでは、NISTのKacker氏、テキサス大学のYu Lei准教授、南京大学のChanghai Nie教授といった昨年来の知人との絆を強めるとともに、新たにインドのダヤナンダ・サガー工科大学のKrishnan Rangarajan教授、マレーシア・サインズ大学のKamal Zamli先生とも知り合うことができました。また、日本から参加されていたNTTの方とも帰国後に連絡をとりあい情報共有を図ることにしました。今後も海外の方々と切磋琢磨しながら日本のソフトウェアテスト技術の向上が図れるような活動を進めていきたいと思います。

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